『父が娘に語る経済の話。』を読んで教養を学ぶ
教養として経済について勉強するために『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著)を読みました。
今回はこの本をおすすめする読者と本の内容、私が得た学びをまとめます。
本記事の目次
こんな人におすすめ
この本を読んでほしいのは、
- 小学生くらいの子どもに優しく賢く社会を生き抜いて欲しいと願う保護者
- 世界に格差がある理由を自発的に学びたい中高生※文字を読むのが苦手ではない人限定
- 商品の価値が決まる仕組みを「需要と供給」以上の言葉で学びたい大学生
- 労働が生む価値や社会構造について考えたい社会人
もしくは、
のいずれかに当てはまる人です。
興味がわいたら、ぜひ続きの「概要」と「学び」も読んでみてください!
ぜひ読んでみたくなると思います。
本の概要
改めて、今回ご紹介する本はこちらです。
題名 | 父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(リンク先はAmazonです) |
---|---|
作者 | ヤニス・バルファキスさん(経済学者・元ギリシャ財務大臣) |
出版年 | 2019年 |
ページ数 | 246ページ |
価格 | 1500円+税 |
本書の内容を「専門的か一般的か」×「理解する目的か実践する目的か」の2軸でプロットすると図のようになりました。
一般的かつ理解重視
この本は、経済の仕組みを説明しながら
- なぜ格差があるのか
- どのように今の経済システムが創られたのか
を例え話を豊富に用い、中高生でも読めるように説明したものです。
経済を中心に扱った本ですが、切っても切り離せない政治の話、環境問題・不平等・倫理観など、人類の課題を広く扱っています。
「人間の生き方」に対する問いも含まれていて、経済学者の父が娘に贈る世界地図(これからの社会の読み解き方)のような存在になっています。
学んだこと
ここでは、私自身が「特に勉強になった」と思う点をお伝えします。
前提として、本書の軸となる経済の歴史についてご紹介します。
概要欄にも示したとおり経済以外のことも多く扱っているのですが、過去を発端に現在の色々な問題が生じているため歴史抜きには他の問題を説明しにくいためです。
例えるなら木の実について語る前に、まず幹について説明しよう、といったところでしょうか。
続いて私が気になったキーワード「交換価値」と「経験価値」について示します。
経済の歴史
本書に書いてあった今に至る経緯をまとめると、このようになります。
突っ込みたいところはありましたが、私の主観が入らないようにしました。ただし画像はイメージです。
- 穀物の余剰を記録するために、信用の元に通貨を利用し始めた
→記録のために文字が、支配者が穀物(権力)を維持するために宗教が生まれた
当時から支配者がいた=不平等が生じていた
倉庫に預けた分の穀物を貝殻に記入していたそうです - 農耕のために畑を耕す道具や灌漑設備などのテクノロジーが発達した
→同時に、支配者の権力維持のために官僚や軍隊も発展した - そのうち、造船が可能になりグローバル貿易が始まった
→取り扱われるものの交換価値は国際的な需給で決まるようになった
羊毛(スコットランド・イングランド)→絹(中国)→刀(日本)→香辛料(インド)で入手と交換を繰り返して元の羊毛の何倍もの量の羊毛を手に入れていたそうです - 領主たちは国際的な価値がある羊を育てるために土地から農奴を追い出した
- 住む場所や食を与えてくれる存在を失った農奴は、自らを労働力として提供するようになった
→労働が交換価値を持つようになった - 元農奴は小起業家になった
- 小起業家は将来の利益を見込んで借金をするようになった
→この頃「借金」に対するヨーロッパ人の考えも寛容になった - 銀行は「未来からおカネを引っ張って」起業家たちにお金を貸し、投資家にローンを売る
- しかし経済成長が鈍くなると、銀行は返済不能のローンを抱え込み、預金の引き出しに応じなくなる
- 預金者はものを買わなくなり、起業家は売れないため労働者を解雇する
- 大量倒産・大量失業=不況になる
- 不況を防ぐため、中央銀行は銀行が破綻したときに返済を保証し、通貨の信用を維持する
- 世界恐慌直後、中央権力に頼らず通貨を扱う「ビットコイン」が誕生した
→解決策として熱狂する人も多かったが、盗難が発生し下火になっている
交換価値>経験価値の時代に
ここでは、本書内で特に勉強になった「交換価値」と「経験価値」についてまとめます。
以下は私の知識も含めて本の内容を再編しています。
歴史を振り返ると、物々交換の時代に林檎を渡して鮭を手に入れたのは「鮭を食べる」という経験価値が欲しかったためです。
自分が鮭を欲していないのであれば(人助けでない限り)鮭に価値はありません。
しかし、穀物に余剰が発生し倉庫に蓄積した証として通貨を使うようになると、通貨が他のものに変えられる証として「交換価値」を持ちました。
逆に言うと交換価値があるからこそ通貨が信用され、使われるようになったのですが。
なお、交換価値は市場価格として表されます。
時が経ち、ヨーロッパで領主によって農奴が追い出された頃、労働の市場が発生します。
これまで農奴は「この土地で生まれた」ことを理由にその領主の元で働いていたのであって、基本的に領主も農奴も互いに「豊富な選択肢から選ぶ」関係ではありませんでした。
農奴が土地を追われたことで、生まれの制約に寄らずに雇用者・被雇用者を選べるようになり、労働が交換価値を持つようになったのです。
その後、起業家が借金をするようになったのも将来の交換価値を見込んでのことでした。
未来を予想したときに「借りたお金と利子を返して、なお利益が出る」と思われる場合に起業家たちは積極的に借金をしました。
未来の交換価値を思い描くことが原動力になっていたのです。
このような経緯も踏まえ、現在は商品の持つ側面(交換価値と経験価値)のうち交換価値ばかりが重視されるようになりました。
よく言われることでもありますが「お金が目的化してしまった」ということですね。
考えたこと
本書は環境問題や不平等など、深い内容まで立ち入っているのですが、ここでは先ほど整理した「交換価値と経験価値」に限って考えたことをまとめます。
自己投資=交換価値?
私は毎月テーマを決めて自己投資を行なっているのですが、本を読んでいてふと頭をよぎったのが
自己投資=交換価値
ではないか、という考えです。
改めて投資とは何かを確認すると、
利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。転じて、その将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと。
とあります。
投資の対象を自分にしたものが自己投資のため、
自己投資は「将来的な利益を見込んで自分に金銭や力をつぎ込むこと」と言えるでしょう。
こうして見ると、自己投資は借金のケースと同様に将来の交換価値を重視しているように思えます。
しかし、私の考えでは「自己投資=交換価値である」という見方は半分正しく、半分間違っています。
というのも、自己投資から得られる何を重視するかによって、交換価値と捉えられるか経験価値と捉えられるか、が異なるからです。
自己投資は、通常の投資(企業の株を買い、株価の変動を踏まえて売買すること)と異なり、投資過程で何らかの経験を得ます。
つまり、投資過程自体が経験価値を生む可能性があるのです。
通常の投資でも、ESG投資などは少し質が異なるかもしれませんが、今回は便宜上「投資=お金を増やすことのみを目的とした手段」と捉えます。
ここで「自己投資が交換価値と経験価値どちらであるか」という問いに立ち戻ると、答えは自己投資をする人のスタンスによって異なり、
- 自己投資による利益を重視する人=交換価値を重視する人
- 自己投資による過程を重視する人=経験価値を重視する人
と言えるでしょう。
後者であれば、極端な話、利益にまで辿り着けずに事故に遭って中断することになってしまったとしても「自己投資をしてよかった」と思えるはずです。(もちろん事故は避けたいですが)
(プチ感想)ちなみに私は「交換価値に目が行きがちな世の中だけれども、限りある人生だから経験価値を重視しよう」と改めて思いました。
以上が、本を読んで私が勉強になったこと・考えたことの一部でした。
本はこちらから確認できます↓
感想
今回、教養を学ぶためにこちらの本を読みました。
経済の歴史的経緯に関しては知っている内容がほとんどでしたが、これまでとは少し違った見方で整理されていて、新たに発見することもありました。
ただしこの本は分かりやすく経済の仕組みを説明してくれるにとどまらず、読者に考えさせる内容が豊富に含まれます。
私自身、この本を読んでいて、昔子どもだった者として、今は社会を作る側として、2つの視点が交錯し、改めて自分に何ができるのかを問う機会となりました。
あえてこの場で宣言すると、すぐにできることとして、
- 選挙で投票する候補者を選ぶ際に新たに学んだ視点を取り入れる
- 自分の労働から得られるものが経験価値なのか交換価値なのか改めて考える
を行なっていこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
自己投資残金
8月の残予算:21,000円
今回購入したもの:「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」
今回使ったお金:1,650円
残りの予算:19,350円
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筆者は毎月、テーマを決めて月収の1割を自分に投資しブログにまとめています。
8月のテーマは読書です。
rikeiol.hatenablog.jpーーーーーーーーーーーーーーー